この記事は「The Truth of Seabas ザ・トゥルース・オブ・シーバス」コーナーの記事です。
Petit Insight of Seabass プチ・インサイト・オブ・シーバス
⬛爆釣時とそうで無い時の違い
突然だが皆さん、同じ釣り場で、爆釣した時と渋かった時の違いについて考えたことはあるだろうか?違いが分かったかどうかは別としても、まぁ、多かれ少なかれ考えたことがある方が大半だろう。
普通、そういう事を考えるとき「潮回り、潮位、潮流の強さ・向き」「時間帯」「天候・水温・風向」「ベイト有無・種類」については、ほとんどの方が考えると思う。
ところで、下記の記事はもう読まれただろうか?これらの記事は全て同じポイントでの記事。私の場合、プライベートでの釣りの場合を除くと、同じポイントで何度も取材をする事は少ないのだが、下の記事のポイントでは珍しく何度も何度も取材をしている。
何故、そんなに何度も何度も同じポイントで取材をしているのかというと理由があるのだが、その理由については下記の記事をご覧頂ければと思う。
上記の記事では、このポイントについてかなり詳細な解説をしているのだが、それを参考にして、実際にここに行ってみた方の中には「なんだよ、ゴルゴの記事通りに、ここに行ってみたのに、全然爆釣しないじゃないか!!」と思っている方もいらっしゃるのではなかろうか。
まぁ、過去の私の経験上、一旦爆釣記事を書いたとしても、そんな爆釣状態がいつまでも続くなどということは100%有り得ないので、私の記事を参考にして釣りに行った方から愚痴をこぼされるのは仕方がないことでもある。
そんなこともあろうかと、このホームページでの全ての取材では、周囲の風景や雰囲気を含め、静止画だけでなく、動画で証拠となるような映像を撮影するようにしているのだが(夜間の暗い動画ばかりなので悔しいのだが・・・)、それらの動画をご覧頂ければわかる通り、上記の記事での爆釣やランカーゲットは、正真正銘の真実なのだ。
しかし、こういう「爆釣」と「激渋」状態の差が大きいポイントというのは、釣果の差が大きいだけに、釣れる時と、釣れない時の「条件の差」が考え易い。
皆さんのお気に入りポイントでも「爆釣かボウズか」みたいな、ギャンブル度が高いポイントがあったら、それはもしかしたら、シーバスの習性を垣間見ることができる貴重なポイントかも知れない。
上記のポイントで、私が「爆釣時と激渋時の条件の差」として最も有望視しているのは、初めに挙げた「潮回り、潮位、潮流の強さ・向き」「時間帯」「天候・水温・風向」「ベイト有無・種類」のような、一般的な因子ではない。
ひと言でいうと「光のメリハリの有無」だ。シーバスフィッシングの教科書なんかには「明暗の境目狙い」が定石の一つとして書かれていることが多く、スズキは暗がりに潜んで、明るい場所から泳いでくるベイトを狙い撃ってくる事が多いと言われている。
そういうケースが在る事については私も同意するのだが、スズキがいつも「暗がりに潜んでいる」とは限らない。「暗がりから突然飛び出して捕食する時」もあれば「明るい場所でバンバン捕食しまくっている時」もある。
この2つのケースにはどんな違いがあるのだろうか?スズキは、どんな時に暗がりに潜んで、どんな時は明るい場所でバンバン捕食しようとするのだろうか?
私自身は、それには明確かつシンプルな理由があると考えているのだが、今回は、その点について私なりの結論を書かせて頂こうと思う。
⬛スズキは明るい場所は嫌いなのか???
よくスズキは、ストラクチャーやヨブ等の凹凸、橋下の暗がり等に隠れていて、近くに来たベイトを待ち伏せている事が多いと言われるが、それもケースバイケースで、いつもいつもスズキは「暗い場所が好き」という訳ではない。下に3つほど事例を挙げてみよう。
【事例1:茨城県「涸沼」インレット中洲】
以前この浅瀬で、下げ潮時にウェーディングした時に、(涸沼の上流側の)涸沼川から大量のベイトの群れが、涸沼の中に流されてきて、もの凄いボイルが起こった事がある。この日は、満月の大潮の日だったのだが、ボイル&バイトがあったのは「満月」が雲間から出ている時だけで、月が雲に隠れると、ボイル&バイトはパタリと無くなった。
この時は、明らかに「明るい」時にスズキの活性は高まっていた。この様な「月が出ている瞬間にボイル・バイトが増える」という同様の現象は、涸沼大橋下でも経験しているし、小櫃川金木橋下や利根川各地でも何度も経験している。
【事例2:東京湾ボートシーバス】
東京湾でのボートシーバスでは、よくシーバースや船のドック、桟橋等の人口構造物を狙うことがよくあるのだが、ライトで煌々と照らされているスポットで、入れ食いの大爆釣に遭遇することも多く、そういう場所では得てして「暗いスポット」の方がアタリは少ない。
【事例3:多摩川河口でのコノシロパターン】
昨年(2020年)の晩秋~年末にかけて、多摩川の河口にはもの凄いコノシロの群れが入り、ランカーシーバスの大爆釣祭りが起こっていた。その祭りのメイン会場でもあった、大師橋周辺では大規模な工事が行われていて、多くの台船が夜間も強力なライトで川面を照らしていたのだが、コノシロに狂った巨大シーバスのボイル&ヒットが多かったのは、明らかにライトが点灯している時間帯で、ライトが消えると、その日のお祭りタイム終了となる事が多かった。
以上は、あくまで例に過ぎないが、「暗いスポット」と「明るいスポット」が並んでいる、又は、交互に出現する様な時、明らかにスズキが「明るい場所/明るい時間帯」を好んでいると思われる経験は数多い。
昔は、スズキが明るい場所を好むのは、人のプレッシャーが少ない場所に限ると思っていた事もあったが、私の過去の経験では、少なくとも夜間に限っては、人が多い場所でもスズキの群れが「明るいスポット」に偏在している事も多い。
魚は「側線」や「浮袋」で水中の音波や水流を感知しているので、ベイトが見えない暗い場所でも、スズキは普通に捕食行動をしているという記事を見たことがあるが、私自身はスズキは「目」に頼っている部分が大きい魚種だと考えている。
「側線」や「浮袋」は確かに聴覚器官の一部だが、これらはあくまで「音波受信機」であり、受信したという情報が「脳」に伝わらなければ「知覚」されない。
特にコイやナマズなんかは音に敏感な事が知られているが、これらの魚種の特徴の1つには「ウェーバー器官」というものがある点が挙げられるのだが、スズキには「ウェーバー器官」は存在しないので、コイやナマズほど音等の水中の波動に敏感では無い。この辺りの話は、以前下記の記事で詳しく解説したので、そちらをご覧頂ければと思うが、ちょっとだけ抜粋・再掲しておこう。
TRUTH42「素早い動きをするベイトパターンにおけるミスバイト対策」
聴覚器官としては「耳石」があるが、浮袋とこの耳石を繋ぐ ” 配線 ” として「ウェーバー小骨」という小骨が連結された「ウェーバー器官」というものがある。このウェーバー器官があると、外で発せられた音(振動)は、浮袋で増幅され耳石に伝えられるので、微妙な振動も音として認識できるようになるので、聴覚がとても鋭くなる。 私達は、音の伝達というと「電話線」や「イヤホン」みたいな「電線」的なものをイメージしがちで「小骨が連結したもの」なんかでは、小さな音や微妙な音の変化は分からないのではないかと思うかもしれないが、それは誤りで、私たちが音を感知する際も、内耳の辺りの「小骨」で外界の振動を骨振動に変換して、脳に伝えている。 「骨」というのは、ものすごく音の伝達効率が良い素材なのである。というか、そういう骨素材の生物だけが生き残るように進化してきたのだろう。自然というものはうまくできている。 ちなみに、ウェーバー器官がある魚類としては、コイやナマズなんかが有名だ。ナマズが騒ぐと地震が起こるという伝説がもし本当なら、その理由はウェーバー器官かもしれないが、釣り人にとってはやっかいな器官だ。魚にこちらの気配を気付かれる可能性が高まる。 しかし、幸いなことに、スズキには浮袋はあるが、ウェーバー器官は無く、浮袋で増幅感知した音(振動)情報は、全く伝達出来ない訳では無いが、あまり効率よく聴覚器官に伝達出来ないので、同じ条件ならコイやナマズほど、スズキは音には敏感ではない。
要するに、スズキにとっては、見える方が食べ易いのだ。
以上が、スズキが「明るい場所を好む」理由だが、一方「ストラクチャーやヨブ等の凹凸、橋下の暗がり等に隠れていて、近くに来たベイトを待ち伏せている」ようなケースは「暗い場所で捕食している」ケースの様にも思うが、実は必ずしもそうではない。
これらの「暗い場所を好んでいる」と思われるようなケースは、確かにスズキ自身は「暗い場所」に身を潜めているが、ベイトを食う瞬間は、そこから飛び出してきて反転食いしてくるケースが大半だ。
「そこから飛び出してくる」という事は、「自分が隠れている暗い場所から明るい場所に飛び出してくる」という事でもあり、スズキ自身は「明るい場所に通りかかったベイト」を、「暗い場所」から「目」で見ている可能性が高い。
以上の内容と、私の過去の実釣経験をふまえると、スズキが「暗い場所に居るケース」と「明るい場所に居るケース」は、下記のようになる。