TRUTH35「ベイトの群れのどこを狙うべきか?」

 

 

 

 

さて、皆さん最近いい釣りをされてるだろうか。今は真夏のリバーシーバスシーズン真っ盛りという感じだが、この季節は川の中は多くのベイトで賑わっていることだろう。先日も、千葉県の作田川の新規ポイント開拓の記事を掲載したが、今は河川内のポイント開拓の絶好の時期ともいえる。

千葉県九十九里「作田川」~新規ポイントでいきなりドカンと1発!!魅惑のランカースポット発見だぁー!?(大型ゲットシーンビデオ有り)

また、川だけでなく、海も沿岸部には多くのベイトの群れが押し寄せてくる時期でもある。海水浴の最中にシュノーケリングをしていると、イワシの大群をよく見かけるのもこの時期だ。ちなみに、7,8月は関東エリアではトウゴロウイワシの産卵接岸が起こる場所もあるので、そんなシーンに遭遇すると、マル、ヒラ入り乱れて爆釣なんてことも夢ではない。上の画像は、以前そんなシーンで釣れたヒラスズキの画像だ。

マヅメ周りには、スズキの大ボイルが発生することもよくあるが、夏に限らずスズキ狙いでは、ベイトの動向が釣果を大きく左右する。ちなみに、先日伊豆半島の熱海に行ったのだが、マリーナに流れ込む川の河口には、夕マヅメの時間帯多くの小魚が集まり、でっかいクロダイが数匹、小魚を追っかけているのが見えた。

また、少し離れたところにスズキらしき影も数匹見えたのだが、私の視力ではよく見えなかった。残念ながら最近の熱海は港湾部周辺では釣り禁止なのでルアーは投げられなかったが、熱海港の方も見に行ってみたところイワシらしきベイトの群れが入っていた。

そこで「ベイトがいっぱい居る、スズキもボイルしている」という夢のようなシーンに遭遇したとき、あなたはどこにルアーを投げ込むだろう?スズキのボイルが見えたところ?それとも、ベイトの群れが一番派手にバシャバシャしているスポットだろうか?

しかし、世の中そんなに甘くは無い。このホームページの記事を購読して頂いている方ならご存知の通り、そんな「ベイトがいっぱい居る、スズキもボイルしている」という夢のようなシーンでも、ルアーにカスリもしないということはしょっちゅう起こる。いわゆる「釣れないボイル」というヤツだ。

そこまで酷い結果でなくても、明らかに目の前で多くのスズキがボイルしているのに、たまにポツポツ釣れる程度という事も多いと思う。しかしそんな時も、結果的には1、2時間で3、4匹のスズキが釣れ、多くのボイルを目にしたので、気分的には「今日は爆釣だった」という気分になることもあったかもしれない。

ただ、考えてみて欲しい。目の前で多くのスズキがバンバンボイルして、物凄い勢いで何かを捕食しているのだ。「ほぼ入れ食いに近い状態で、1、2時間で40、50匹」ならまだしも「1、2時間で3、4匹」というのは「激渋」と考えるべきだろう。それなりの釣果を得られたとしても、まだまだ考えるべきことは沢山あるのだ。

ということで今回は、そんな「沢山ある考えるべきこと」の中の1つとなるかもしれない内容をご紹介してみることにする。今回の記事は、釣りのノウハウでもあるが、ある意味「研究結果」と言ってもいい内容だと思う。

では、早速GO!!


■目の前のベイトの群れの「どこ」にルアーを投げる?

運よく、そういうベイトの群れに遭遇したとき、その小魚の群れの “ どこ ” にルアーを投げ込むのが一番スズキが釣れる確率が高くなるのだろうか?

例えば、目の前の円形の範囲(別に四角形でもなんでもいい)に、小魚がピチャピチャ跳ねている場合、その「円形の範囲」のどこを狙えば、一番オイシイ思いを出来る可能性が高まるだろうか。

よく言われるのは、ベイトの「群れの真ん中狙い」と「群れの境界狙い」の2つだが、実際のところどっちがより釣れるのだろうか?それとも、そんな細かい事は考えずに、ベイトの群れの辺りに適当にランダムにキャストすればいいだろうか?

それに答えるには、実際にそういうシーンで、どこにキャストしたときに釣れる確率が高まるか実験してみればいいのだが、現実には、なかなかそういうオイシイシーンに遭遇出来ないし、統計的に有意な程度のサンプル数(回数)のデータを蓄積するのは極めて難しい。

仮に、ある程度のサンプル数が揃っても、それらの1回1回の釣りは、大なり小なり自然条件が異なるので、その時スズキが釣れた数の違いが「キャストスポット」だけの違いによって生じたものかどうかは、ほぼ100%判断できないと思っていいだろう。

では、それを科学的に検証することが全く不可能化というと、必ずしもそうとは言い切れない。以前、私は自分のパソコンで、プログラムを作って、スズキの捕食に関するコンピュータシミュレーションを行った結果をご紹介した。

今回も、理論と実践の中間に位置する、コンピュータシミュレーションを使って、先程の「群れの真ん中狙い」と「群れの境界狙い」の問題に、一つの回答・仮説を出してみたいと思う。


■シミュレーションモデルの作成

ここで、パソコンのシミュレーションなんかで、実際の自然の何がわかるんだ?と疑問を持たれる方もおられるかと思うが、私自身は、うまく使えば、この手法は極めて有効な手段の一つと考えている。

うまいシミュレーションというのは、完璧に、あるポイントの状況を再現することではない。仮に、あるポイントの状況を完璧に再現したとしても、その結果は、そのポイントのその条件の時にしか当てはまらず、時々刻々と変化する自然の中では使い物にならない。

しかも、実際の釣り場の細部にわたるリアルな再現は、ものすごい労力が必要なわりに、いろいろなポイントで汎用性のある戦略にはならない。つまり、汎用性のある釣りの戦略を構築するには、細部にわたる完璧な自然の再現が必要なのではなく、自分が知りたいことの “ 本質部分 ” だけをうまく切り出して ” 細部を省く ” 作業こそが重要なのである。

コンピュータシミュレーションにはいろいろな手法があるが、今回使用したのは、以前の記事と同様「マルチエージェントシミュレーション」という手法を用いた。

この手法の一般論については、上にご紹介した以前の記事をご参照頂く事にして、まずは今回のシミュレーションの登場人物である「ベイト」「スズキ」「ルアー」の動きについて、どんな規則でプログラムしたかを解説することにする。


■ベイトの動きのルール

通常、ベイトが集まっているポイントに立ったとき、目の前の水面では、所々ベイトの群れの塊がうごめいているのが目視できるだろう。そんな時、私たちは、いくつか見える、ベイトの群れの塊の中の一つを選び、その塊の “ どこか ” にめがけてルアーをキャストする。今回は、そんな「一つの塊を選んだ後」の状況をシミュレーションする。

まず、ベイトの群れの塊にはいろいろな形があるが、今回のシミュレーションでは、そういう “ 群れの形の多様性 ” を敢えて無視して、群れの形は「一辺が5メートルの正方形」とする。別に「円形」や「楕円形」でもいいのだが、今回はプログラミングが簡単な「正方形」を選択した。

そして、その正方形の枠の中(枠の線上も含む)で、ベイトとスズキ達は泳ぎまわっているものとする。つまり、境界線にぶつかったベイトやスズキは、ボールの様に、内側に向かってある一定の角度の範囲で跳ね返るものとする。ここで、スズキは50センチ以内に近づいたベイトやルアーには必ず食いつき、ミスバイトは無いとする。

更に、ベイトの数は200匹、スズキの数は4匹とした。これも、別に「ベイトの数は20000匹、スズキの数は400匹」でも構わないのだが、魚の数が多くなると、私のノートパソコンではシミュレーションの計算に時間がかかるし、本質的には変わらないので、とりあえず少ない数で結果を見てみることにする。

また、ベイトとスズキの泳ぎ方は完全にランダム、すなわちこの正方形の枠内をベイトとスズキが、何の規則も無くバラバラに泳いでいるとしよう。下の画像は、私がパソコンで作った実際のシミュレーション画面だ。ちなみに、下の図では「赤丸」のルアーは表示していない。

《実際のシミュレーションの初期画面例》

また、このシミュレーションでは、ベイトやスズキの数・視野の広さについても、自由に数値(パラメーター)を変えられるようにしておいた。

ちなみに、ここでいう「視野の広さ」とは下記の2種類である。

  • 捕食視野:スズキはどのくらいの範囲の視野に入ると捕食するか
  • 作群視野:スズキ、ベイトはそれぞれ、どのくらいの範囲の視野に入った仲間と群れを作るか

《実際に使用したパラメーター入力画面》

ここで、1つ質問。

皆さんは、ルアーを正方形の中心に投げた場合と、正方形の枠の境界線に沿って投げた場合で、どちらがヒット率が高くなると思うだろうか?

ちなみに、釣り師は正方形の角に立ってルアーを投げているものとし、ルアーの飛距離は、どの方向に投げる場合でも全て同じ距離(具体的には、正方形の中心から角までの距離に等しい距離)で、リトリーブ方法は、魚の泳ぐ早さよりも遅い低速のただ引きとする。

以下、シミュレーションから得られた結果について解説&考察してみよう。


■ベイトの「群れの真ん中」と「群れの境界」どっちを狙うのが正解?

直感的には、ベイトやスズキはランダムに泳いでいるので、ルアーをどこに投げようが、ヒット率に違いは出ないと思うかもしれないが、結果はさにあらず。驚くべきことに、ヒット率には1.3倍の差が出たのだ。さて、より多くのヒットが得られたのは、どちらだろう?

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