前回はゴールデンウィーク特別企画として「TRUTH8「ポイントを知るという事 ~ゴルゴ横山のスズキヒット動画本邦初公開!!~」 」を掲載したが、今回は、TRUTH7「偶然との戦い ~あの子のパンツは?~」の続き。
前回の「TRUTH7「偶然との戦い ~あの子のパンツは?~」」では「偶然」と「ランダム」の違いについて解説し、最後にサイコロの例を用いて「少ない回数で1を出すには、1が出る確率がより高いサイコロを選べばいい」と述べた・・・
■勝てるサイコロを使う
ここでもう一度、サイコロの話を思い出そう。1から4までの数字が書かれた正4面体のサイコロで、1が偶然出る確率は4分の1である。コインの裏表に1と2を書いて投げた時、1が偶然出る確率は2分の1だ。どちらも1が出たのは「偶然」だが、コイン投げの方が1が出る確率は2倍高い。
ここでもし「ベテランは初心者よりも釣れる確率が高い」という経験則が真実なら、初心者は面数の多い「めったに1が出ないサイコロ」を使っていて、ベテランは「より面数が少なく1が出やすいサイコロ」を使っていると考えるのが合理的である。
ちなみに、私たちの住むこの3次元空間では、正多面体には正4面体、正6面体、正8面体、正12面体、正二20面体の5種類しかないことが数学的に証明できるのだが、釣りの女神さまはそれ以上の面数のサイコロを持っているようである。
(※画像出典: 面の大きさを同じにした無限大角多面体5種類の作品)
私は、スズキをルアーで狙い始めてから約1年間、スズキは1匹も釣れなかった。いくら初心者でもそれは無いだろうと思う方もいらっしゃるかもしれないが、これは嘘みたいホントの話だ。もし、釣りの女神様が使っているサイコロが最大でも正二20面体なら、どんなに下手くそな釣り師でも20回に1回は偶然スズキは釣れるはずである。
しかし、私が当時連続でボウズを食らった回数は20回どころでは無かった。よく釣りをやめなかったものである。私が釣りをやめなかったのは、ひとえに友人や先輩たちは釣れていたからである。彼らは、どこでそんなにいいサイコロを手に入れたのだろう。
ということで、より釣れるようになるためには、より面数の少ないサイコロを使えばいいということになるが、ここで問題になるのは「サイコロの面の数」とは、釣りにおいては何を指すのか?ということである。ぱっと考えると、ベテランほど多くの戦略の引き出しを持っているので、ベテランが使っているサイコロは「面の数が多い」ようにも思えるが、どうやらそうでは無いらしい。
ベテランほど「少ない面のサイコロ」を使っていると考えるのが合理的である。でなければ、ベテランの方が釣れる確率が高いという事実に反する。以下、その点について考えてみよう。
■サイコロの面とは何か?
多くの場合「釣れるスポット」は極めて限定された場所である。荒川河口の東京側のゴロタなど春秋のベストシーズンにスズキの群れが入ったという情報が出回ると、川沿いに釣り師がずらーっと並ぶこともあるが、ある特定の場所に立っている人間だけが入れ食いで、そこ以外の場所の釣り人にはアタリすらないという光景を何度も見ている。
(※画像出典:Google Map)
また、秋の乗っ込みシーズンの千葉県盤津干潟のみお筋も、爆釣情報が出ると、多くの釣り師がみお筋沿いや沖のかけ上がり沿いに並ぶ。しかし、釣れるのはごく一部の場所だけであり、しかもその一部の場所では連続ヒットすることが多い。
(※画像出典:Google Map)
これらの「ごく一部の人間だけが釣れる」理由として「立っている場所」以外に「本人の腕」や「使用ルアー」などが原因となっている可能性も無くはないが、私自身はどんな釣りでも「ポイント8割、腕・道具2割」と考えており、8割がた「立っている場所」が釣れた理由となっていると考えている。正確に言うと「立っている場所」というより「ルアーを投げ込んだ場所」だ。
(※勿論「立っている場所」が同じなら、釣果の差は「腕・道具」(と「運/偶然」)で決まる。ちなみに、ここで言う「道具」には竿・リール・糸だけでなくルアーも含まれる)
いずれにせよ「ルアーを投げ込んだ場所」については、その違いが例え微妙であっても、釣果の差は天と地くらい大きな差となって現れることが多い。極端な場合、雑談できるくらいの距離で2人並んで釣りをしていても、横の人間の方は入れ食いなのに自分はボウズという経験を、私は何度もしている。
「釣れるスポット」は極めて限定された場所であることが多いのだ。その極めて限定された「釣れるスポット」に立つことが「当たりクジを引く」ということだ。先程のサイコロの話で言うと「1を出す」ということになる。
■少ない面の数のサイコロとは?
ここで、実際に雨後の千葉県部原海岸に立っているとしよう。ご存じない方のために簡単に説明すると、ここはサーフィンで有名なサーフで、砂浜の左右には岩礁帯があり、サーフには流れ込みがある。(ちなみに、ここの流れ込みは、雨後以外は砂に水が染み込んでしまい、海まで流れ込んでいないことが多い。但し、この手の流れ込みは、地表からは見えなくても、砂の中から海に染み出している)。