蒸し暑い梅雨の日々が続いているが、皆さんいかがお過ごしだろうか。去年に引き続き、今年の夏・秋も豪雨・台風が多くなりそうだ。そんな状況下、これからの時期に釣行頻度が高くなる「河川系ポイント」では「堰の開閉状況」が気になる場所も多くなるが、この「堰」は色々な意味で奥が深い。。。というか、よく理解しておくと、ポイント開拓や魚の習性の理解が深まる。
その「堰の奥深さ」については、また別の機会に書かせていただくこととして、今回は「利根川」の河口堰について書いてみようと思う。利根川河口堰の開閉状況については、下のリンクからリアルタイムの開閉状況が確認できるようになっている。
下の画像は、上のリンク先にある、堰の開閉状況を示す画像の「2020年8月17日 19時30分時点」のものだが、普通の釣り師は、こんなものを見せられてもさっぱり意味が分からないはずだ。
なんだかよく分からない画像だが、実は上の画像の赤点線で囲った「操作タイプ3」という表示が堰の開閉状況を示している。それを理解するには、まずは利根川河口堰のメカニズムを理解する必要があるので、今回はそれについて詳しく解説しよう。それにしても、なんでお役所というのは、こういう分かりにくい情報公開をするのだろう。何か意図があるのだろうか・・・
また、たまに「利根川のあのポイントは河口堰が閉じている時は、魚が遡上してこないのであまり釣れない」みたいな事を耳にすることがあるが、実は利根川河口堰が、24時間全て閉じているなんてことは無いし、全て開いているなんてことも洪水時以外は無いのだ。「河口堰が閉じている時」という言い方をする時点で、この河口堰の事をよく知らない証拠でもある。
常に11個ある放水門の幾つかは、必ず開いている。そりゃそうだ。あの大きな利根川を完全に堰き止めてしまったら、支流の川が溢れて氾濫してしまうだろう。そんな危険が生じないよう、どんな時でも必ずいくつかのゲートは開いているのだ。
ということで、スズキは、ほぼ毎日河口堰を行き来していると考えるべきだ。その理由も、下に記した利根川河口堰のメカニズムを知ることで納得できるだろう。
しかしそこまで言っても、過去には「いや、実績では堰が閉じている時は、明らかにスズキがよく釣れなくなるから、閉じている時はスズキが遡上する量は、明らかに減る」と言われる事があった。
ただ、その人間はどれだけのデータを基にそういう法則を導き出していたのだろうか?少なくとも、私は納得がいく数字を見たことが無い。
まぁ、魚道研究の論文や、魚道設計の資料を読むと、一般に魚は流れが強い場所に引き寄せられ習性があるから、河口堰周辺のポイントを狙う場合には、どの門が開いているかが影響を与えるとは思うが、私が利根川の河口堰の上流域を狙う時に、河口堰のその日の短期的な開閉状況を気にする事は全く無いし、それでもスズキは釣れている。
ちなみに、利根川河口堰にも魚道があり、魚道は24時間いつでも開いている。
利根川河口堰の魚道の様子は以下の通り。左岸側の魚道はスズキが遡上するのは厳しい気がするが、右岸側の魚道は水量次第ではスズキでも遡上可能だろう。
《利根川河口堰左岸側の魚道》
《利根川河口堰右岸側の魚道 ※左側には多自然魚道も併設されている》
それに、利根川河口堰の構造を見れば一目瞭然だが、釣り人からは一見堰が閉じているように見えるときでも、実は水中では堰が開いている時もあるので、外から一般人が見て正確な開閉状況を目視で判断するのは難しい。
とすると、先ほど書いた「実績では堰が閉じている時は、明らかにスズキがよく釣れなくなるから、閉じている時はスズキが遡上する量は、明らかに減る」と言った方が、仮に目視による堰の開閉状況と釣果のデータを取っていたとしても、それはかなり怪しいデータと言わざるを得ない。
下で詳しく解説しているが、利根川河口堰の開閉パターンには5種類ある。もしも、堰の開閉状況と釣果の関係性のデータを集めたいなら、少なくとも、それら「5つの開閉パターン」と「釣果」の相関関係のデータを集める必要があるだろう。しかし、実は利根川河口堰には、それ以外にもスズキの通り道は存在しており、それらも考慮すると、もはや河口堰の開閉と釣果の関係を導き出すのは不可能に近い。
ということで、以下、利根川河口堰の構造と開閉のメカニズムについて解説しよう。
■「利根川河口堰」のメカニズム