TRUTH42「素早い動きをするベイトパターンにおけるミスバイト対策」

 

 

 

 

今回の記事は「The Truth of Seabass ザ・トゥルース・オブ・シーバス」コーナーの記事で、「TRUTH41「バチ抜け期の『口外フッキング』への対応ーその3:バチ抜けミスバイトへの処方箋」の続編です。


さて、今回もいつものごとく前回の記事の最後の部分を再掲しておこう。

今回はバチ抜けパターンを題材に「のろい動きのベイト」におけるミスバイト対策について考えてみたが、別にスズキはバチばかり食べている訳ではない。イワシやコノシロみたいな、比較的素早い動きをするベイトもよく食べている。

次回は、そんな「素早い動きをするベイトパターン」におけるミスバイト対策について、超マニアックに考えてみたいと思う

ということで、今回は比較的素早い動きをする小魚系のベイトパターンにおけるミスバイト対策について解説することにする。この手のパターンにおいては、前回までのバチ抜けパターンとはまた別の視点が必要になる。

ご参考までに、イワシの群れの動きとばち抜け中のバチの群れの動きの動画を以下に掲載しておこう。但し、これらの動画はあくまで参考で、重要なのはスズキに追われた時の「逃避速度の変化」であり、それはイワシの方が圧倒的に速度変化が大きい。・・・というか、バチの場合は、スズキに追われても逃避行動はほとんど見られない。

《イワシの群れの動き》

《バチの群れの動き》

仮に目の前でボイルが起こっていたとしても、前回までテーマにしてきた「バチ抜け」パターンでは、それほど派手な水しぶきが上がったり、大きなバシャッ!という音がすることは稀で、ボイル音もシュボッ!という感じの渋い音がすることが多い。

逆に、スズキが小魚系の比較的すばしこいベイトを追っている時のボイルでは、水面上に半身が飛び出して、大きな水柱をあげたり、バッシャン!という派手な着水音をさせる事が多くなる。このボイルの派手さは、大きなスズキほど派手になる傾向がある。

ランカークラスにもなると、そのボイル音を聞いただけで「おっ!ここにはデカイスズキが居るな!!」と感じる位、派手なボイルをすることがある。そんなボイルを目の当たりにしておきながら、ミスバイトばかりで、全くヒットに持ち込めない時などは、軽いウツになるが、そういう経験をされた方も多いだろう。

ということで、今回はそんな状況での処方箋について考えてみようと思う。


■魚の知覚センサーと感覚器 ~「側線」「浮袋」よりも「目」に注目!!~

スズキがミスバイトをしてしまうというのは、ルアーへの接触タイミングが微妙にズレしてまった場合に多く起こりそうな気がする。では、スズキがルアーまでの「接触タイミング」を認知するのはどういうメカニズムなのだろう。

魚が持っている外界の主な知覚センサーは「目」「側線」「浮袋」だ。ちなみに「浮袋」は「鰾(ひょう)」とも書き、「鰾」と書いて「うきぶくろ」と読ませる場合もある。

光については、おでこの辺りに「上生体」と呼ばれる光感知器官があり、これが光を感知する機能を持っていることが確認されているが、詳しい機能・役割については詳しくは分かっていない。

また「浮袋」はあくまで「音(振動)のセンサー」であり、外で発せられた音(振動)は、魚の体表を通り抜けて浮袋内の気体を振動させる。ただ、浮袋内の気体が振動しても、それを「音」として脳が認識するためには、浮袋内の振動変化を聴覚器官に伝達する配線が無いと「音」として認知することは出来ない。

聴覚器官としては「耳石」があるが、浮袋とこの耳石を繋ぐ ” 配線 ” として「ウェーバー小骨」という小骨が連結された「ウェーバー器官」というものがある。このウェーバー器官があると、外で発せられた音(振動)は、浮袋で増幅され耳石に伝えられるので、微妙な振動も音として認識できるようになるので、聴覚がとても鋭くなる。

私達は、音の伝達というと「電話線」や「イヤホン」みたいな「電線」的なものをイメージしがちで「小骨が連結したもの」なんかでは、小さな音や微妙な音の変化は分からないのではないかと思うかもしれないが、それは誤りで、私たちが音を感知する際も、内耳の辺りの「小骨」で外界の振動を骨振動に変換して、脳に伝えている。

「骨」というのは、ものすごく音の伝達効率が良い素材なのである。というか、そういう骨素材の生物だけが生き残るように進化してきたのだろう。自然というものはうまくできている。

ちなみに、ウェーバー器官がある魚類としては、コイやナマズなんかが有名だ。ナマズが騒ぐと地震が起こるという伝説がもし本当なら、その理由はウェーバー器官かもしれないが、釣り人にとってはやっかいな器官だ。魚にこちらの気配を気付かれる可能性が高まる。

しかし、幸いなことに、スズキには浮袋はあるが、ウェーバー器官は無く、浮袋で増幅感知した音(振動)情報は、全く伝達出来ない訳では無いが、あまり効率よく聴覚器官に伝達出来ないので、同じ条件ならコイやナマズほど、音には敏感ではない。

ただ、世の中には「浮袋」が無い魚も居るので、そういう魚に比べると、スズキはまだマシ。ウェーバー器官が無くとも、それ以外の浮袋周辺にある筋肉なんかも聴覚器官に振動を伝えるので「浮袋」は、無いよりもあった方が聴覚は良くなる。

ちなみに、浮袋が無い魚の代表例は「アイナメ」「ハゼ」「カサゴ類」「ヒラメ」「カレイ目の成魚」「アンコウ」。ベタ底に住んでいて、あまり広範囲を活発に回遊しない魚に多い。

まぁ「浮袋」は文字通り「浮く袋」なので、上層に浮く必要が無い魚類には必要性が低い器官ともいえる。逆に、スズキの様に、上層にもよくいる魚は「浮袋」で泳層を大きく調整するので、大きな浮袋を持っている事が多い。また、早く泳ぐときなどは空気を吐き出し体を細くして、水の抵抗を減らし、ゆっくりと泳ぐ場合は浮き袋を膨らますみたいな調整もしているらしい。

ということで、スズキは聴覚的には、ナマズやコイほど敏感では無いが、ヒラメや根魚ほど鈍感でもないという、半端なポジションにいる魚といえる。基本的にはあまり音には敏感な魚ではないと考えていい。

とはいえ、スズキも音を感知していることには代わりないので、スズキがベイトやルアーの存在を「音(振動)」で感知している可能性は高い。ただ、ここで注目したいのは「距離感」を掴むには「3点測量」が必要ということである。

人間でも目の不自由な方は、音だけでも距離感が分かるようになると言われているが、それは人間には頭の両側の離れた場所に耳が1つずつ、計2つの音センサーが付いているからだ。浮袋だけで距離感を掴むのは難しいだろう。

そして「側線」だが、側線は目で見ると、小さな点が一直線に並んでいるようなものに見えるが、その小さな点を顕微鏡で拡大してみてみると「穴の中に小さな毛が生えている」器官であることがわかる。

この「毛」が、水流変化でなびくことで、外界の状況を感知しているのだ。そして、この「毛」の物理特性を細かく調べてみると、あまり細かい振動は感知できないことが知られている。

ものすごくザックリ言うと「近くにストラクチャーや岸壁があって水の流れに変化がある」みたいな、比較的大きな「流れの変化」は正確に感知できるが「音波」のような、細かな振動数の水流変化に対しては、感度が鈍いということである。

側線は体の両側にあるので「3点測量」は可能で「距離感」も掴めるが、それは大きな対象物や、大きな振動(低い音)の水流変化に限られる。

以上より、スズキが「イワシ等の素早い動きをする小さなベイト」に対して追尾行動をする際は「浮袋」「側線」よりも「視覚」に頼る部分が非常に多いと考えるのが合理的になる。

一方「浮袋」や「側線」は「地形や水流変化」に主に使われている可能性が高い。例えば、ストラクチャーや岸壁の存在、ヨブ・カケ上がりの位置や、流れの境目である「潮目」の存在等の感知だ。

つまり、私のアバウトなイメージとしては、スズキは

「そこにカケ上がりやストラクチャー、潮目がある」というような地形・水流の変化は側線と浮袋からの情報を使用し、ベイトの細かい動きは目からの情報をメインに使用している」
という感じだ。

ということで「素早い動きをするベイトパターンにおけるミスバイト対策」みたいな ” 細かい事 ” を考える場合は、スズキの「目」に注目する事が、より近道になる可能性が高いと考えられる。

しかし「目」による従来の知覚理論には、大きな問題点・矛盾が隠されていたのである。しかし、これについて釣り雑誌等で語られているのは見た事が無い。以下、その点について解説しよう。


過去語られてきた「網膜」理論の矛盾

スズキでも人間でも、外界の景色が反射した光を、目の「網膜」に投影する事で物が見える。そんなこともあり、魚の視覚については、過去、多くの釣り雑誌で記事が書かれてきたが、そのほとんどは魚の「網膜」の特性や機能に注目した記事で、その生理学的な知見を基にした記事だった。もっと言うと、魚の事だけを見て、魚の視覚について語られて来たという事である。

しかし、そこには1つ大きな矛盾が潜んでいた。

網膜は映画のスクリーンの様な二次元平面だ(正確には曲面だが、二次元である事には変わりない)。二次元平面に映った映像からは「奥行き」という三次元情報は絶対に得られない。つまり、目玉が2つあっても、その2つの目からは「奥行き(距離)」の情報が得られないので、距離感を掴むための「3点測量」は不可能なのだ。

しかし、私達は実際に「奥行き」を認識できる。何故だ!?これは明らかな矛盾だ。

この矛盾は、別に私の個人的な素人考えではなく、実は中世のデカルトの時代以来、多くの議論が為されてきた難問でもある。これについて、学問の世界では、過去、以下の様な説明が成される事が多かった。

「網膜を持つ動物は、二次元スクリーンに映った映像情報の中から、脳で「推論」や「計算」を行い「奥行き」情報を再構成している」と・・・。

確かに、ややこしい計算に基づく推論を行えば、奥行きの距離感は計算可能なケースも多い。しかし、これはかなり怪しい話だ。個人的には、全くもって有り得ない説だと考えている。

網膜を持つ動物には全て「推論」や「計算」を行えるくらい優秀な「脳」があるのだろうか?そんなことは無いだろう。人間だって、そんな計算は難しい、、、というか、ほぼ不可能だと思う。

物を手に取ろうとするたびに、そんな計算をいちいちやらなければいけないとしたら、生きていくのが嫌になる。そうなると、少なくともそんな脳を持っていない、人間以外の動物については、間違いなく別のメカニズムがあるはずである。

そんな信念に基づき、色々研究結果を調べてみると、なんと!近年、動物が障害物を避けたり、ベイトに突進する様な、一見「奥行き(距離感)」等の距離情報を必要とするような行為も「奥行き(距離感)」の認知無しで達成可能であることが発見されていたのである!!

以下、その研究結果を解説しつつ「素早い動きをするベイトパターンにおけるミスバイト対策」について考えてみようと思う。こんな記事、過去書かれた事は無いと思うし、他では絶対に読めないだろう。おそらく、ここで読まなければ、このことを一生知らずに終わる可能性が高い、ハイパーマニアック記事だ。

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