TRUTH25「重いルアーほど吸い込まれにくい理由(その1)」

 

 

 

 

先日、当サイトの「My Love Passion 俺の愛を聞け!」コーナーに、タックルハウスの「TKLM:Tuned K-TEN」についてのレビュー記事を掲載した。

TKLM:Tuned K-TEN “9㎝/11g”Lipless Minnow

「TKLM:Tuned K-TEN」の9㎝タイプには「フローティング」「シンキング」「サスペンド」の3タイプがあり、その中でも「サスペンド」タイプについて、公式HPでは下記の様な解説文が掲載されていると紹介した。

吸い込まれやすさのため、発売を見送っていたオリジナル・サスペンドモデル。純正でバーブレスフックを装着してはいますが、改めて、丸呑みにはご注意ください。

そして、レビュー記事の中で私は、この解説文の内容に、いくつかの疑問を呈したのだが、天下のタックルハウスの公式見解に異論を唱える以上、半端な理由では礼を失することになる。今回は「ルアーの吸い込まれ易さ」について、深く掘り下げてみようと思う。


■この記事を読む際の注意点

今回のテーマである「ルアーの吸い込まれ易さ」について、過去釣りメディアの中でちゃんと語られたのを私は見たことが無い(ザックリとした議論は読んだことがある気がするが・・・)。もしかしたら、今まで1度もちゃんと語られたことが無いのかもしれない。しかし、それも無理は無い。これは、ものすごく難しい話だからだ。ということで、今回はこの点について、かなり本気で考えてみた。

但し、水中の物体にかかる力と言うものは、専門的には「流体力学」の話になるが、この「流体力学」というものは、物理学・工学の中でも、かなり難しい分野で、専門書の多くに未だ間違った解説が書かれていたり、未解決の問題も存在している。そういう意味では、研究者にとっては、とてもエキサイティングな領域ともいえるだろう。

例えば、今回とても重要な因子として出てくる「揚力」については、専門家の間でさえ、かなり間違った理解・解説が流布している。以下、基礎科学研究所のHPに掲載されている、副所長の松田卓也氏の解説文を一部抜粋しておく。

後で述べるアメリカのアンダーソン氏は英語の解説書を調べて、その7割が間違っていると言う。石綿良三先生は日本の解説書を調べて、その83%で飛行機の揚力の説明が間違いか不十分であると言われる。・・・(中略)・・・「飛行機はなぜとぶか」でググってみよう。JAL-航空まめ知識「飛行機はなぜ飛ぶのか? 」、日本原子力開発機構「飛行機はなぜ飛ぶのか?」は間違いである。その他の解説もほとんどが間違いである。正しい解説がほとんど存在しない状況だ。

翼の揚力を巡る誤概念と都市伝説

うむむ。専門書やGoogle先生もむやみに信用できないとなると、門外漢の私のような人間がこの話題に足を踏み入れるのは無理な話なのだろうか・・・。

また、リトリーブ中のルアーの周りには、マクロ・ミクロレベルの様々な水の流れが発生し、特に重要になる因子に「渦」がある。この「渦」を含む「流れ」の挙動を説明・予測する上での極めて重要な方程式に「ナビエ・ストークス方程式」というものがある。

「ナビエ・ストークス方程式」とは、水や気体みたいな「流れる物質(流体)」の動きを記述するのに使われる基本的な方程式で、実務の世界では、既に天気予報にも応用されている。

しかし、実用的に使用されているこの基礎方程式も、実は「方程式が満たすような未来の世界が必ずあるという保証(解の存在)」と「ひとつの条件を与えたらその後は必ずひとつの状態しか出てこない(一意性)」は、未だ証明されておらず「本当にこの方程式を使っていいのか?」についての数学的に厳密な保証は無い状況なのだ。

正確に言うと、空間が「2次元」の場合は、既に証明されているのだが、現実の空間は「3次元」で、この「3次元」の場合が、未だ証明されていない。もしかしたら天気予報が外れる時というのは、この方程式から複数の解が出てきてしまう条件の日なのかもしれない。

しかし、他に使えるものが無いので、とりあえず「実務的には、これは多分使って大丈夫だろう」ということで、実務の世界では使われている。まぁ、実務的にいまだに使用されているということは、ほぼ使っても大丈夫なのだろうが「絶対大丈夫か?」と聞かれると「いや、それは・・・」となってしまう。

これは大問題だ。そんなこともあり、アメリカのクレイ数学研究所は2000年に、ミレニアム懸賞問題として、この問題の解決に、約1億円の懸賞金をかけたが、未だに証明に成功した数学者は存在しない。


■無駄話

ちなみに、クレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題のほとんどは未だ未解決のままだが、その中に「ポアンカレ予想の証明」という問題がある。これは数年前にロシアの数学者ペレルマンが証明に成功した。

ペレルマンが証明に成功したニュースは、新聞でもニュースになったし、NHKスペシャルでも放送されたので、ご存知の方も多いかもしれない。当然世界中の数学者も興味津々で、本人による説明会みたいなものも開かれたのだが、世界有数の数学者の頭脳を持ってしても、その内容は全く理解できず、皆、落胆したり、悔しがったとのことだ。

ご参考までに、そこに参加した「ポアンカレ予想の証明」に人生を費やしてきた世界有数の数学者の1人がつぶやいた一言を以下に挙げておく。

「まず、ポアンカレ予想を解かれたことに落胆し、それがトポロジーではなく(トポロジーの研究者にとっては古い数学と思われていた)微分幾何学を使って解かれたことに落胆し、そして、その解説がまったく理解できないことに落胆した」

要するに、世界中の専門家が誰も考えたことも無い新しい数学をペレルマンが開発し、それを使って証明されてしまったため、誰も理解できなかったということだ。英語を聞いたことが無い人間が、とんでもなく難しい話しを、英語で解説されたようなものである。

これに似た話では「ABC予想」の証明でも起こっている。

「ABC予想」は、長年世界中の数学者を悩ませてきた超難問なのだが、2012年のある日、突然インターネット上に「ABC予想」を証明したとする論文が掲載された。執筆者は、京都大数理解析研究所の望月新一教授(48)。

当然そのニュースは、世界中の数学者の間で話題になったのだが、この手の有名な難問の証明については「オレは証明に成功した」という人間が手を挙げることはよくあることで、そのほぼ全ては本人の勘違いか間違いだった。そんなこともあり、望月氏の証明も、はじめは眉唾ではないかと言う論評も多かったようである。

しかし、望月氏の過去の経歴や過去に発表していた論文の内容の正確性から「望月が証明したというなら、もしかして本当なのかもしれない」という専門家が多く、本格的な「証明の検証作業」が、世界中で始まった。

ところが、その証明論文は600ページを超えるとんでもない論文だった。しかもそこで使われていた「数学」は、今まで人類の誰も見たことが無い「数学の言葉」で書かれていたため、書いた本人以外、地球上の誰もその証明の真偽を判断出来なかったのである。

望月氏は、今まで存在していなかった「新たな数学の理論体系」を作ることから始め、それを使って「ABC予想」を証明したらしいという事しか分からなかったとのことだ。その数学理論の名前は「宇宙際タイヒミューラー理論」。もう、名前からして意味不明だ。数学理論なのに「宇宙」という文字が入っている時点で、かなりキレている。彼は、既存の「数学理論」を使って「証明」を行ったのではなく、「証明」を記述するための「数学理論」をゼロから作り始めることろから始めたのだ。

そんなこともあり、望月氏の論文は「異世界からきた論文」と言われ、この証明を理解するには、その前にこの数学理論を基礎から勉強する必要があった。勿論、世界中の数学者は、はじめこの理論を勉強しようと試みたが、あまりに難解過ぎて、世界のTOP数学者達が束になっても、誰もその内容を理解できず「こうなったら、皆で勉強会を開こう」ということになり、2016年7月に京都大学で、この理論の大規模な国際研究集会が開催された。つい2年前の話だ。

その勉強会の後、主催者のイヴァン・フェセンコ」 は「この研究集会で少なくとも10人が詳細に理論を理解した」と語った。つまり、世界中から集まったTOP数学者達の中でも「10人しか」理解できなかったということである。

結局、この「証明の検証作業」は、世界中の数学者が束になっても5年かかり、昨年2017年の年末にやっとこの証明の正しさが確認され、数学の専門誌に掲載されることとなった。数学界の難問というのは、とんでもない発想が無いと、もはや証明不可能なレベルになっているのである。

話がかなり横道にそれたが、先程挙げた「流れ」の挙動を説明・予測する上での極めて重要な方程式である「ナビエ・ストークス方程式」の問題も、そのレベルの難問であり、素人が手を出すのはとても難しいテーマだということをご理解頂ければと思う。

従って、下記に掲載する内容については、私的にはかなり細かい考察を行ったつもりだが、専門的には未だザックリとした話のレベルであり、もしかしたら誤り・誤解も含まれている可能性がある。もし、この内容を専門家の方がお読みになって、誤り・誤解を発見した場合は、ご遠慮なくご指摘頂ければと思う。勿論、内容の訂正が必要になった場合は、このサイトで正直に公開する。


■リトリーブ中のルアーにかかる力の種類

「ルアーの吸い込まれ易さ」を考えるには、まず、そもそもリトリーブ中のルアーにはどんな力が掛かっているのかを知る必要がある。そこで、先日のTKLMのレビュー記事を掲載してから、毎日のようにこの事について、いろいろ調べたり、考えをめぐらしていた。

おかげで、当サイトの記事の掲載頻度が遅くなってしまった。このサイトの記事の掲載頻度が落ちた時は、大体この手の難しいテーマに取り組んでいる時なので、気長にお待ち頂けると嬉しい。

と、言い訳しつつ、長い思索の結果、バイトの瞬間に、ルアーに掛かっている力は下図のような6種類の力が掛かっているとの結論に至った。

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