一度釣られた根付きのヒラスズキは元の場所に戻るのか?

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先日「一度釣られた根付きのヒラスズキは元の場所に戻るのか?」という質問を頂いた。

言われてみれば、確かに気になる疑問である。私自身、ヒラスズキは過去にそれなりの数を釣ってきているが、その疑問に答えられるデータは持っていない。もし、それに答えられるデータがあるとすれば、JGFAの「タグ&リリース」の再捕データくらいしか思いつかない。

ということで、久々にJGFAのデータを覗いてみた。JGFAが「タグ&リリース」を開始したのは1985年。私が釣りライターを始めたばかりの20年近く前にこのデータを見たことがあるが、まだJGFAの「タグ&リリース」の再捕データは、まだサンプル数が少なく、あまり細かいデータは期待できなかった。

しかし、あれから20年近くの月日がたち、JGFA会員の皆さんの地道な活動により、かなりのデータが溜まってきていた。さすがJGFA。継続は力なりだ。とりあえず一般に公開されているデータを元に、私なりの結論を書くとすると、

「ヒラスズキはかなり広範囲に回遊するが、元の場所に戻る可能性は十分にある」

ということになる。JGFAの「タグ&リリース」とは「釣れた魚にJGFA指定のタグと呼ばれる標識をつけて再放流(リリース)すること」だ。つまり、同じ場所で同じタグの付いた個体が再捕獲されれば、その魚が同じ場所に戻ってきた事が実証されたことになる。JGFAの再捕データには、そういう実例がある。以下、JGFA「タグ&リリース」コーナーに掲載された記事からの抜粋だ。


以下 外房のヒラスズキが4年4ヶ月ぶりに再捕!からの抜粋だ。

≪「ヒラスズキJG-47169再捕レポート」より≫

  • 2011年10月15日に千葉県勝浦市「川津の磯」で叉長45cmのヒラスズキが「タグ&リリース」された。
  • 2016年2月23日に同じ千葉県勝浦市「川津の磯」で全長77㎝に成長した同じタグの付いたヒラスズキが再捕獲された。

このヒラスズキは、同じ場所に戻ってきて再度釣られたことになる。サンプル数はたった1つだが、これは貴重なデータだ。このヒラスズキは確かに元の場所に戻っていたのだ。

ただ、ヒラスズキは常に同じ場所に居るかというと、その可能性は低く、相当な広範囲を回遊しているとも考えている。JGFAの再捕データでは、下記のように、実際に相当な広範囲をヒラスズキが回遊していたというデータがある。

・千葉の白浜➡館山

・千葉の外房➡神奈川県真鶴の定置網

・千葉の外房➡伊豆半島の妻良

・千葉の外房➡駿河湾

・千葉の外房➡伊豆諸島の大島

※他に、外房、相模湾、駿河湾から三重県尾鷲付近まで移動したのが5例

といった実データもある。ヒラスズキの回遊範囲は想像以上に広範囲だ。夏休みは伊豆諸島へ開拓の旅に出るのもいいかもしれない。千葉からのタグ放流データが多いのは、千葉に「タグ&リリース」に積極的なJGFA会員の方が多いためだろう。

私たちが「キャッチ&リリース」をすることは「資源保護」という実感しにくい大義名分のためだけでなく、自分自身がいつも行っているポイントのヒラスズキの個体数の維持にも繋がる可能性があるのである。

ちなみに、上記の報告には、更に補足情報として、以下の内容が報告されている。

最初に「タグ&リリース」された「叉長45㎝」での放流時点で、すでにタグが抜け落ちた痕跡があった。つまり、この時点で過去に少なくとも1度は、このヒラスズキはどこかで捕獲されていた。従って、2度目に「全長77cm」で「タグ&リリース」されるまでに、この個体は少なくとも3回は釣られた可能性が高い。

つまり、このヒラスズキは77cmに成長するまでに、8年近い月日を擁しており、それまでに少なくとも3回は確実に釣られている。ランカークラスのヒラスズキを育むには10年近い年月が必要なのだ。ちなみにスズキの成長速度は、サイズが大きくなるほど遅くなることが知られている。そして、このヒラスズキは何度もルアーに食いつき釣り人を楽しませてくれた。

私は「常にキャッチ&リリースすべき」という意見には反対だが、このJGFAの「タグ&リリース」活動と再捕データの蓄積は、釣り人にとって色々な意味で有意義なものだと考えている。

また、私自身は「キャッチ&リリース」と「キャッチ&イート」は、どちらも「自分がよく行くポイントの環境保護」や「スズキを大切に思う心の育成」に繋がると考えている。これについての私なりの考えについては、また改めて記事として掲載しようと思っている。

釣りに行けないひと時や、釣り場でアタリが無く暇な時、たまにはこんな事を考えてみてはいかがだろう。

また、更に詳しい、マルスズキの移動経路に関する記事は下記のリンクへ。

マルスズキの回遊範囲と経路(ただいま執筆中)


※なお、JGFAの「タグ&リリース」はスズキ以外の魚種についても幅広く行われている。皆さんも、タグが付いた魚(スズキ以外も含め)を釣った際は、是非下記のフォームからJGFAに報告してあげて欲しい。

再捕報告受付


 

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